これはもはや事故です!

めざめれば隣に……

 目を覚ましたとき、最初に感じたのは、体温だった。

 腕の中に、柔らかい重み。
 寝息が、すぐ近くで聞こえる。
 シーツの感触が、昨夜の続きを思い出させた。

(……あ、私……磯崎さんと……)

 昨夜の出来事が、美羽の脳裏によみがえる。
 触れたことも、触れられたことも。
 そして、そのあと、離れなかったことも。

 美羽は、そっと瞬きをして、状況を確かめるように身じろぎした。
 すると、すぐに腕に力が入る。

「……起きた?」

 耳元で、低い声。
 すぐ近くすぎて、心臓が跳ねる。

「……は、はい……」

 声が、少しだけ掠れていた。
 それが、自分でも分かってしまって、頬が熱くなる。

 磯崎は、起き上がろうとせず、そのまま美羽を抱いたままだった。
 昨日までの二人とは、どこか違う甘い空気につつまれている。

 回された手は、もう遠慮しないのに、大切にされているのがわかる。

「磯崎さん……」

「ん?」

 目が合う。
 一瞬だけ、互いに言葉を探すみたいな沈黙。

 でも、気まずさはなかった。

 磯崎は、ゆっくりと上体を起こし、美羽を見た。

「……体、きつくないか」

 それを聞いた途端、美羽の顔は真っ赤になる。

「だ、大丈夫。……たぶん」

「”たぶん”は禁止な」

「はい……」

「ん、」

 それだけ言って、磯崎は小さく息を吐いた。
 安心したのが、はっきり分かる。
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