これはもはや事故です!

これからどうしますか

美羽の様子を見ながら、磯崎は静かに口を開いた。

「……出かける準備をしたら、行こうか」

「え?どこに……?」

「警察だよ。昨日のこと、ちゃんと被害届を出した方がいい」

 落ち着いた声。
 でもその奥には、確かな怒りと責任が滲んでいた。

 美羽は思わず、膝の上の指をぎゅっと握る。

「……あの、できれば……警察は……。おおげさにするのは嫌、というか……昨日の人たちと、もう関わりたくないんです……」

言葉にすると、胸がきゅっと縮んだ。
 磯崎は一瞬だけまぶたを伏せ、次の瞬間、ゆっくり美羽の目を見た。

「気持ちはわかるよ。……昨日のことを思い出すだけでも怖いだろうし、できれば忘れたいって思うのも自然だ」

 その言葉に、胸の奥が少しだけ軽くなる。
 磯崎はスラックスのポケットに手を入れ、深く息を吐いた。

「だが、……美羽さんを怪我させた相手を、このままにしておくわけにはいかない」

 低く静かな声。
 怒鳴り声ではないのに、心にずしんと響く。
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