これはもはや事故です!

朝です。

 カーテンの隙間から、淡い光が差し込む。
 美羽は、ゆっくりと目を開けた。

(……あれ……)

 最初に感じたのは、確かな温もり。

「……っ」

 顔を上げると、すぐ隣に、磯崎の横顔があった。
 目を閉じて、静かに呼吸している。

(……わっ、近い!もしかして、添い寝してもらってた……)

 慌てて身体を離そうとして、足にぴりっとした痛みが走る。

「いたっ」

「大丈夫か?……無理するな」

 低い声が聞こえて、美羽は目をパチクリさせた。
 いつの間にか、磯崎が起きていたのだ。

「す、すみません……!」

「謝ることじゃない」

 肩を軽く回しながら、穏やかに言う。

「よく眠ってたな」

 その言い方が、看病でも責任でもなくて。
 ただ、一緒に過ごした夜の、自然な続きみたいだった。

 美羽は、胸の前で手を握りしめた。

「……磯崎さん」

「ん?」

 美羽は、息を整えてから、ゆっくりと話す。

「……また、そちらで……お世話になっても、いいですか……?」

 磯崎は、驚いた顔をしなかった。
 ただ、静かに、うなずく。

「もちろん」

 それだけ。

 大げさな約束も、理由の説明も、いらなかった。

 意地を張って戻った夜。
 泣いて、迷って、耐えた時間。

 それでも今、美羽は、自分の気持ちを誤魔化さなかった。

(磯崎さんを……信じてみたい)

 そう思えたことが、何よりの変化だった。
 狭いワンルームに、朝の光が満ちていく。
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