一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
第五章 紫都とリスタート
 バスで添乗員として朝の挨拶をする。
 
「皆様、おはようございます。本日は桜名所巡りツアーの最終日ということで、予定では石山観音池公園の散策となっております………が…」
 
 つい、空席になった赤石さんのシートを見て、言葉が詰まりそうになる。
 けれど、お客様全員がマイクを持つ私を心配そうに見ているのが分かり、グッと感情を押し殺した。
 
「本来ならば、3500本のさくらが皆様を出迎える所だったのですが、あいにく宮崎も早咲きで、昨日の情報では既に葉桜となっておりまして………」

 ツツジが咲いてるならまだ良かったが、それもまだだし、有料の遊具や施設はこの格安ツアーではメインとして利用出来ない。
 
「石山観音池公園の代案として、道の駅で買い物というのはいかがでしょうか? 」
 
 そこは、特産品が多く取り揃えてあり、きんかんのソフトクリームが美味しいと評判だった。
 
「いいよー、そこで」 「もう今日はゆっくりしよーやー」
 
 お客様が拍手と同意の言葉をくださり、
 
「ありがとうございます」
 
 お礼を言って、前方の蛯原さんと岡田に頷いて見せた。
 
 バスがゆっくりと都城(みやこのじょう)を離れて行く。






 
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