「暁月さんに絶対服従 ~隠れ家カフェの常連日記~」
愛があるのか、考えてみた
  


 愛があったら、偽装結婚ではないのでは?

 っていうか、そうなると、最初の契約と話が違ってくるのでは?

 そう思いながらも、環奈は滝本の家を出られないでいた。

 こちらの方が会社に近いので、なんとなくいることが多くなっていた滝本の家で、日曜日、環奈はゼリーを作っていた。

 最近、みんなが一品ずつお菓子を作ってくるので、自分も作らねばと思ったのだ。

 こういう妙なブーム、たまにある。

「なにやってんだ?」
と起きてきた滝本が訊いてくる。

「ゼリー作ってるんです。
 明日、会社で麻沙子さんたちに配ろうかと思って。

 課長もおひとついかがですか?」

 ああ、そうだな、と言う滝本の目はキッチンにあるゼリーの素を見ている。

 ……お湯を入れて混ぜるだけですが、なにか?

 可愛いカップと飾りの食べられるお花は熟考して買ってきたんですよ……。

 朝食作るから退けよ、と思われてるな、と思いながら、環奈は、
「あと冷やすだけなんで。
 急いで頑張って作りますので、少々お待ちください」
と言ってみたが、

「頑張るのは冷蔵庫だろ」
と言って滝本は行ってしまった。

 ……やはり、愛はない気がする。

 少なくとも、あちら側には――。


 

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