極甘CEOと交際0日の仮初結婚 ~一途な彼の、初恋妻になりました~

*5章* 交際0日の決意

 スーパーで見かけたと思ったんだよね、と隼人は言った。――だから何回か連絡したのに、何で返してくんないの。もしかして俺のことブロックした?

 答える義理なんてないと思ったから、無視をして、手を振り払って逃げようと思った。

 だけど、

「おっと、」

 隼人はにやにやと笑ったまま、私の左腕を掴み直す。右手に持っていたバッグが地面に落ちる。
 苦いタバコの匂いが、私にまとわりつく。

「何? 拗ねてんの」

 呆れた声すら出なかった。いったい、何をどう考えたら、私が拗ねているという結論に辿り着くのだろう。
 私が何も答えないでいると、隼人はぺらぺらと話を続けた。

「俺さ、結構ストレス溜まってんだよねー。毎日アレやれコレやれって言われるし、タバコもろくに吸えないし……専業主夫って楽だと思ったんだけどなあ」

 はーあ、と隼人は大きな溜息を吐いた。

 タバコの匂いに吐き気がする。

 私の腕を掴んだまま、隼人は言った。

「だからさ、紗夜香が慰めてよ」

「は……?」

 唖然とした。この男はいったい、何を言っているの。
 立ち尽くす私の顔を覗き込んで、隼人はいびつな笑みを浮かべる。

「おまえのさ、可愛げのあるところと、従順なところは好きだったよ」

 隼人の指先が、私の頬へ伸びる。
 避けようとしたら、乱暴な手つきでうなじを掴まれた。

「知ってるよ。俺に、未練タラタラだっただろ?」

「離してよ!」

 振りほどきたいのに、びくともしない。
 下劣な声が、私をせせら笑う。

「そんなさー、勿体ぶらなくてもいいって」

 タバコの悪臭ごと、隼人の顔が近づいてくる。息が重なるほどの距離で、

「――また、愛してやるよ」

 隼人が傲慢に囁く。
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