追放令嬢が可愛い犬を拾ったら実は狼の神獣でした〜なぜか気に入られて国を滅ぼしそうな勢いです〜

12悲しい過去

「イリオ様!」

 倒れこんだエリスを抱きかかえたイリオの元に、一羽のカラスが勢いよく飛んできた。着地すると同時に黒い煙が上がり、そのカラスは人の形になる。

「レイヴン、どうした」
「こちらに、禍々しい魔力をまとった男が向かってきています。応戦しようとしたのですが、あまりの魔力量に近づくこともままならず、急いで報告しに来た次第です。……何もできず、申し訳ありません」

 レイヴンは悔しそうに唇を噛み、一つに結んだ黒い艶やかな髪をサラリとたらしながら申し訳なさそうにお辞儀をする。

「いや、いいんだ。奴の気配は感じていた。あれはどうしようもないだろう。それに、俺自身が決着をつけなければいけないからな」
「ははは、決着?そうだね、決着をつけて、その子を――リーリアを返してもらおう」

 突然、イリオとレイヴンの目の前に濃い赤紫の光が竜巻のように現れる。そこには、ファシウスが悠然と立って微笑んでいた。

「もう来たのか」

 レイヴンが憎らしそうにファシウスを睨みつけるが、そんなことは気にしないと言わんばかりの顔でファシウスはレイヴンを一瞥した。

「返してもらうだ?リーリアはお前のものじゃない。それに、今はリーリアではなくエリスだ」
「はっ、エリスね。リーリアの魂を持つ肉体なだけだろ?あちらの世界に逃げようとしたみたいだけど、リーリアの心臓に俺が打ち付けた楔のせいで、あちらの世界に拒否されたんだろう?ざまあないな!俺とリーリアを引き離そうなんてするからだ!」

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