君は名前を持たない。 　　　　　　 　　　　　　記憶も持たない。 　　　　でも僕は、君との会話を、忘れないと決めた。 　　　　これが、〝君〟が提案した〝最初の一文〟だったね。

　こわいこわーい魔女にさらわれたお姫様を助けるのは、　いつだって王子様です。 　　　　　　　　　　金色の王冠をかぶって、白い馬に乗って 　　　　お姫様を助ける王子様に小さいころ、男の子だった僕はあこがれてた。 　　　　　　僕もいつかこんなかっこいい人になれるのかな～？、、、と。 その期待、憧れ、夢が粉々に打ち砕かれたのは１３年前のあの日僕がまだ、３歳の時だった。 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　コンプレックスを抱える美少年 　　　　《姫》さざみ　くいな 　「暗い、怖い。誰か、、、助けて、、、」 　　　　　×　 　　　　不愛想なイケメン転校生　 　　　　《王子》林城　唯人 　「くいな、可愛い。俺が守ってやるからな。」 　　　　　一途なわんこ系幼馴染 　　　　　《騎士》　沖谷　竜也 「好きだ。くいな、、、だけどお前の幸せの為なら俺は手を引ける」 　　　　　　　　誰だって憧れるでしょ？ 空を飛んで、困っている人を助け、かいぶつをやっつけるスーパヒーロー 　　　　　　　　泥棒などを逮捕するかっこいい警察官 　　　　　　　　そして、そして！ 　　こわーい魔女にさらわれ、城に閉じ込められたお姫様を助ける王子様！ 　　　　　　　 だけど、今の僕はきっと王子様ではない。 　　フリフリのドレスを着て、キラキラのティアラを頭にのせているお姫様 　　　 「はやく、はやく、誰か、、、助けて、、、お、、うじ、、さま？」