ファインダー越しの瀬川くん
ファインダー越しの世界
「ごめんな、山内(やまうち)。先生も頑張ったんだが……流石に部員が一人じゃ、これ以上どうにも出来なくてな。写真部は、今年いっぱいで廃部になることが決定した。……本当に、すまない」

職員室を出て教室に戻る道すがら、ついさっき告げられた言葉を思い出す。
申し訳なさそうに頭を下げる初老の教師は、間もなく定年だと聞いていたので、廃部の話もさほど驚きはしなかった。
顧問の退職と共に部活は廃部。予測出来ていたからこそ、心の準備はしっかりと済ませてある。

「……今年で終わり、か」

それでも、やはり胸に広がっていく寂しさは抑えようがなかった。
小さく呟いた言葉が、誰もいない廊下に寂しく響く。

グラウンドからは運動部の掛け声が、三階の音楽室からは吹奏楽部の音色が聞こえてくるが、そのどれもがキラキラと輝いていて、仲間のいないたった一人にして最後の写真部員である山内には、それがとても眩しく感じた。

靴音がやけに大きく聞こえる廊下を黙々と歩いて、教室のドアを開ける。
窓際の後ろから二つ目、一つだけポツンと鞄が置かれた席に向かうと、思わず深いため息が零れた。
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