ファインダー越しの瀬川くん
変わる世界
「写真部、なくなっちゃって寂しいね」

正式に廃部になるのはまだ少し先だが、コンクール出展を持って写真部としての活動は最後となった今、山内がカメラを持ち歩く理由も、持ってきても許される理由も、もうなくなった。

「瀬川くんってば、最初は写真部の存在すら知らなかったのに、今は寂しいの?」

山内としても、寂しくないと言えば嘘になるが、シュンっと眉を下げる瀬川に笑顔を見せる。
それもこれも全て、それまで代わり映えのしなかった生活に生まれた変化のおかげで、いつも一人ぼっちだった放課後の教室に響く話し声が、その寂しさを紛らわせる。

「寂しいよ、だって……」

いつも一人で写真を眺めていた席の一つ前には、こちらを振り向いて座る瀬川がいる。

「もう、山内さんに写真撮ってもらえなくなった」

いじけたような、拗ねたような表情をしてみせる瀬川に、思わずくすっと笑みが溢れる。

「瀬川くんって、そんなに撮られるのが好きだったんだ」

子供みたいな表情を見せる瀬川があまりに可愛らしくて、ここにカメラがないことがとても悔やまれる。

「うーん……撮られるのが好きって言うよりも」
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