早河シリーズ完結編【魔術師】
第六章 審判
太陽が沈み、今日もまた空が闇に染まる。仕事を終えた松田宏文が隼人の病室を訪れた。
鎌倉市内で斗真が無事保護されたと連絡を受け、ひとまず安堵する隼人と松田だったが、美月の行方は掴めないまま。不安と心配が募る状況で交わす松田との談笑が隼人の気を紛らわせてくれた。
『ヒロは美月のこと、まだ好きなのか?』
さっきまで笑っていた隼人の顔からは笑みが消えていた。松田は雑誌のページを閉じてベッドサイドのテーブルに置く。
いつかは、隼人からこのような質問を受けることになるとどこかで予期していた。特別、動揺や驚きの感情はない。
松田は冷静に隼人の真意を探った。
『それはLikeとしてかLoveとしてか、どちらを聞いてる?』
『もちろんLoveの方に決まってるだろ』
聞かなくてもわかっていることをあえてワンクッション置いて尋ねたのは、覚悟までの時間稼ぎ。
『一度愛した女にはいつまでもLike以上の感情はあるものじゃないか? 俺は少なくともLike以下にはならない』
『それが答え?』
『そうだね』
沈黙の訪れは気まずくはない。けれど心地よくもない緊張感。
友人としてではなく、同じ女を好きになった男として二人は心を向き合わせていた。
『俺から美月を奪いたいって思ったことは?』
『大学の時は本気で奪ってやろうかと思ってた。隼人くんのことで泣く彼女を見ていられなかったからね』
『今は美月を自分の女にしたいと思わないのか?』
『全然。美月が幸せならそれでいい。隼人くんと結婚して母親になった美月は、誰の目から見ても幸せに映ってると思う』
『本当にそうならいいんだけどな……』
誰かが廊下を通るスリッパの音、呼び出しのアナウンス、扉の開閉の音、彼らを取り巻く物音はすべて病室の外の音。
この病室内はとても静かだった。
鎌倉市内で斗真が無事保護されたと連絡を受け、ひとまず安堵する隼人と松田だったが、美月の行方は掴めないまま。不安と心配が募る状況で交わす松田との談笑が隼人の気を紛らわせてくれた。
『ヒロは美月のこと、まだ好きなのか?』
さっきまで笑っていた隼人の顔からは笑みが消えていた。松田は雑誌のページを閉じてベッドサイドのテーブルに置く。
いつかは、隼人からこのような質問を受けることになるとどこかで予期していた。特別、動揺や驚きの感情はない。
松田は冷静に隼人の真意を探った。
『それはLikeとしてかLoveとしてか、どちらを聞いてる?』
『もちろんLoveの方に決まってるだろ』
聞かなくてもわかっていることをあえてワンクッション置いて尋ねたのは、覚悟までの時間稼ぎ。
『一度愛した女にはいつまでもLike以上の感情はあるものじゃないか? 俺は少なくともLike以下にはならない』
『それが答え?』
『そうだね』
沈黙の訪れは気まずくはない。けれど心地よくもない緊張感。
友人としてではなく、同じ女を好きになった男として二人は心を向き合わせていた。
『俺から美月を奪いたいって思ったことは?』
『大学の時は本気で奪ってやろうかと思ってた。隼人くんのことで泣く彼女を見ていられなかったからね』
『今は美月を自分の女にしたいと思わないのか?』
『全然。美月が幸せならそれでいい。隼人くんと結婚して母親になった美月は、誰の目から見ても幸せに映ってると思う』
『本当にそうならいいんだけどな……』
誰かが廊下を通るスリッパの音、呼び出しのアナウンス、扉の開閉の音、彼らを取り巻く物音はすべて病室の外の音。
この病室内はとても静かだった。