The previous night of the world revolution4~I.D.~

side華弦

──────…その頃、ヘールシュミット邸では。






「…地下牢から逃げた?あの二人が?」

「はい…申し訳ございません。どうやら、服の中に武器を隠し持っていたようで…」

私は、またしてもアシミムの前で深々と頭を垂れた。

「ボディチェックはしたはずではなくて?」

「はい。ですが…一通り武器は徴収したので、もうないものだと思っていたと…」

ボディチェックをしたのは、私ではない。

あの二人の実力なら、あんなザルなボディチェックくらい簡単にすり抜けると思っていた。

一度逃げおおせた敵の本拠地に、仲間を助ける為にわざわざ戻ってくるような…命知らずの連中なのだから。

「詰めが甘いですわね…。折角捕らえて、彼らも使えると思いましたのに…」

「…申し訳ございません」

すると。

アシミムの後ろに、側近のように控えていた彼が。

ルレイア・ティシェリーだったはずの男が、アシミムに向かって申し出た。

「お望みなら、捕まえてきましょうか。彼らの潜伏地さえ掴めれば、再び捕らえることは可能ですが」

「…そうですわね…」

私は、この男が心底憐れだった。

…お前を助ける為に、あの二人は命を懸けて戻ってきたというのに。

最早この男は、彼らが仲間であったことすら忘れているのだ。

塗り替えられてしまったから。

この冷酷な女…アシミムに。

「また攻めてこられると面倒ですわね…。…良いですわ。では、ルシファー。逃げた二人を探して、捕まえてきてくださいな」

「はい、分かりました」

ルレイア…今は、ルシファーと名乗っているが…彼は笑顔で頷いた。

偽りの主に。

「…」

私は深く頭を下げ、アシミムの目を見ないように努めた。

今彼女の目を見たら、間違いなく、憎しみと軽蔑がバレてしまうだろうから。
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