The previous night of the world revolution4~I.D.~

sideルレイア

─────…ヘールシュミット邸への帰り道。

俺は、自分の情けなさに涙が出そうだった。

「はぁ、ルルシー…。ルルシールルシールルシー…」

何度も何度も、その愛しい名前を繰り返した。

俺の馬鹿。本当に馬鹿。

世界で一番忘れちゃいけない人の名前を忘れるなんて。

自分で、自分が信じられない。

どうして、忘れてしまっていたんだろう?

何であんな金髪縦ロールが、俺の救世主だなんて思い込んでいたのだろう?

少し考えれば分かるだろうに。

俺が地獄を味わった帝国騎士官学校に、何でシェルドニアのアシミムが助けに来られるんだ。

有り得ないだろう。

ルルシーが俺を助けてくれたときのことは、印刷でもしたように克明に覚えていたはずなのに。

都合良く、ルルシーの部分をアシミムにすり替えられていた。

そのせいで俺は、アシミムが自分の救世主だと思い込んでいたのだ。

…馬鹿めが。

アシミムも当然憎いが、自分に一番腹が立つ。

「…ルルシー…」

俺はもう一度、その愛しい名前を呼んだ。

彼が俺を生き返らせてくれた。

「ルレイア・ティシェリー」を甦らせてくれた。

もう二度と忘れるな。

お前を、二度も救ってくれた救世主の名前を。


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