The previous night of the world revolution4~I.D.~

sideアドルファス

──────…その頃、帝国騎士団では。









『青薔薇連合会』の次期首領、アイズレンシアが訪ねてきたと言うから。

オルタンスを呼びに来たら、これだ。

「…おい。何やってる」

「うん?」

仕事やってんのかと思ったら。

オルタンスは、何やら爪にぺたぺたと塗りたくっていた。

シンナー臭ぇこの部屋。

見てみろ。あまりに信じられない光景だったのか、ルーシッドが呆然としてる。

「何だそれは」

「何だって…マニキュアじゃないか」

「…」

マニキュアをぺたぺた塗りたくる帝国騎士団長(男)。

「…何でそんなことやってんだ」

「何でって…。知らないのか?これは、某大手化粧品メーカーから発売された、『frontier』がキャンペーンモデルを務める新色マニキュア五種類だ」

「…」

…お前『frontier』好きだよな。ライブノリノリだったし。

「…で、それを何故お前が塗ってる?」

「ルレイアがルティス帝国にいたら、さぞかし喜んで塗るだろうなと思って…。ルレイアの代わりに、俺が塗ってみた」

ルレイアの代わりにお前が塗っても、何の意味もないだろ。

「丁度良かった。二人共、俺がルトリアカラーを塗ったから、別メンバーのカラーを塗ってみてくれ」

「は?」

「全種類あるぞ。ルクシーカラーもエルーシアカラーもミヤノカラーも。ベーシュちゃんカラーも女の子に絶大な人気を誇っているらしいから。ほら」

四種類のマニキュアを差し出すオルタンス。

…何で全種類買ってんだよ。お前。

ってか塗らねぇよ。

「…ルーシッド。お前塗ってやれ」

「えぇっ!?そ、そんな…。俺、マニキュアとかは…」

嫌か。そうだな。

俺も嫌だ。

「そ、それよりオルタンス殿…!『青薔薇連合会』からアイズレンシア殿が来ていますよ」

「!ルレイアの安否が分かったのか?」

「それを今から聞こうとして、呼びに来たんですが…」

お前がマニキュアなんか塗ってたんだよ。この馬鹿。

ルーシッド。もっと言ってやれ。

「それならそうと早く言ってくれれば、あ」

「あ?」

立ち上がりかけたオルタンスは、呆然と自分の爪を見つめた。

「…まだ乾いてない」

「知るかよ!」

もうこいつ、置いていこう、と思った。

一生マニキュア塗っとけ。
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