The previous night of the world revolution4~I.D.~

side華弦

─────…ついに。

ついに、このときが来た。

長きに渡る監禁生活のせいで、やつれ、疲れ果てた人相をしているものの。

この男が、シラノを…シラノと私のお母さんを殺した。

あのときは、ただ泣き寝入りするしかなかった。

でも、今なら。

今なら私は、この男に復讐出来る。

「…よくぞ、帰ってきてくれましたね。ラトヴィさん」

私は、ゆっくりとこの男に歩み寄った。

ラトヴィはぼんやりとしていたが、私の目に宿る殺気に気づいたらしく、ぎょっとしたような顔をした。

だが、もう遅い。

私は、ラトヴィの手を掴み、隠し持っていたナイフを彼の首に当てた。

アシミムの悲鳴が響き渡った。

「な、何をするんですの、華弦!やめて!」

「…黙りなさい」

「ラトヴィを離してちょうだい!その子は、私の大事な…」

「黙りなさい!!」

「…!」

大事なものを持っているのが、自分だけだと思ったか。

奴隷だろうと、異国人だろうと関係ない。

大事なものなら、私でも持ってる。

そして、それを奪われた!

「よくもぬけぬけと、私にこの男の世話を頼めたものですね」

最後の最後まで、おめでたい女だ。

私の復讐心にも気づかず。ただラトヴィラトヴィと。

「あなたはいつもそうですよ、アシミム・ヘールシュミット。自分では何もせず、いつだって他人任せ。ラトヴィが大事と言いながら、取り戻す為にあなたは何をしたんですか?他人を動かしただけでしょう!」

「うわっ。めっちゃ正論~!」

「…ルレイア。ちょっと黙ってような?」

ルルシー・エンタルーシアが、ルレイアを諌めていた。

それすら構わず、私は続けた。

「この男が何をしたか、知らないとは言わせませんよ。自分の女奴隷を平気でレイプし、孕んだら堕胎させて売り飛ばして!この男に襲われたせいで、自殺した人までいるのに!あなたは、それを隠蔽して!弟を庇って!この男に、生きる権利なんてない。助ける価値なんてないんです!」

「よく言った!俺もそう思います!」

「うん、ルレイア。ちょっと黙ってような…!」

「いやんルルシー。口塞がな、もごもごもご」

茶々を入れるルレイアを、ルルシーが押さえている間。

アシミムは呆然として、私を見つめていた。

信じられない、という顔だ。
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