The previous night of the world revolution4~I.D.~

sideルルシー

──────…その、少し前。



おかしな夢を見ていた俺は、ルレイアが苦しむ声で目を覚ました。

「…ん…ルレイア…?」

寝惚けたまま、ベッドサイドのランプをつけた。

すると、俺の隣に寝ていたルレイアが、酷く苦しそうに胸を押さえて、苦悶の呻き声をあげていた。

俺の眠気は、一瞬にして消え去った。

「ルレイア…!?」

ルレイアの、こんな苦しそうな姿は。

最初に出会ったあの頃以外に…見たことはなかった。

「ルレイア!どうした?大丈夫か!?」

ルレイアは答えず、苦しそうに目を閉じて、自分の胸を強く掴んでいた。

ただ事ではない、と思った。

大体ルレイアは、寝る前から様子がおかしかったじゃないか。

夕食を要らないと言ったり、展望台で眠りこけてしまったり。

ルレイアの様子がおかしいことは分かっていた。それなのに、俺は能天気にも寝てしまった。

俺が、ルレイアを…ちゃんと見守っていれば。

だが、今は自分を責めているときではない。

悪夢に苦しめられているのであろうルレイアを、まずは起こさなくては。

「起きろ、ルレイア!目を覚ませ!」

呼び掛けながら、ルレイアの身体を強く揺さぶる。

すると、ルレイアは苦しそうに目を開いた。

「大丈夫か、ルレイア…」

「う…ぁ…」

目を覚ましたものの、ルレイアの目は虚ろで、俺を見ているはずなのに、視点はもっと遠くを見ていた。

「ルレイア、しっかりし…」

「る…き、は」

「…え?」

ルレイアは、俺をその名前で呼んだ。

あまりにも懐かしくて、一瞬、誰の名前か分からなかった。

ルルシーではなく。

ルキハ、と。

それは…その名前で俺を呼ぶということは…。

「ルキハ…。い、行かないで…。たす、け…」

ルレイアではない。

今のルレイアはルレイアではなく、昔の…。

脳裏に、出会ったばかりの頃のルレイア…ルシファーの虚ろな目と、絶望に満ちた表情。

そして、『青薔薇連合会』に入る前…二年間入院していたあの頃を思い出し、戦慄した。

俺は、ルレイアが助けを求めて弱々しく伸ばした手を、しっかりと掴んだ。

「助けてやる。何回でも。俺が何回でも、お前を助けてやる!」

「…る…き、は…」

ルキハだろうが、ルルシーだろうが、好きなように呼んでくれれば良いが。

ただ、正気のルレイアなら…俺をルキハと呼ぶことは許せないはずだ。

「…ルルシーだよ。ルレイア…。俺はルルシーだ」

「る…るしー…?」

「そうだ。しっかりしろ、ルレイア…」

「う…ぅ…」

ルレイアは相変わらず、苦しそうに胸を押さえていた。

「たす…け…。るき…は…」

「ルレイア!正気に戻れ!」

隣室で、何やら騒いでいる声が聞こえたのだろう。

ルリシヤが、俺達の部屋に入ってきた。

「ルレイア先輩?ルルシー先輩、さすがに激し…。…どうした?」

「ルリシヤ!ルレイアが、ルレイアが…!」

俺の声色と、俺にしがみつくようにして震えているルレイアを見て、ただ事ではないと思ったのか。

ルリシヤは、仮面越しに血相を変えて駆け寄ってきた。
< 58 / 580 >

この作品をシェア

pagetop