The previous night of the world revolution4~I.D.~

sideルレイア

──────…翌朝。

「…んん…」

…正直なところ、目覚めはあまり良くなかった。

むしろ、悪い。

不味い酒を飲まされた挙げ句、試しにと摘まみ食いした女が、予想以上に『美味しく』なかったときの朝みたいな気分だ。

しかし。

「…ん?」

俺の傍らには、ルルシーがいた。

ルルシーが、何とも無防備な姿で眠っていた。

俺にとっては、これはボーナスチャンスだ。

是非ともこのまま美味しく頂きたいところだったが、残念ながら今はそれどころではない。

ベッドサイドの時計は、午前七時を差していた。

おいおい。一時に起こしてって言ったじゃん。

起こされたのに、俺が起きなかったのか?

いやいや。ルルシーがやっぱりズルしたのだ。

もー。お馬鹿、起こしてって言ったじゃん。

ちゅーして起こしてやろうか。

「ルルシー、ルルシー朝ですよ」

「…う…」

普段通りなら、ここは間違いなく王子様のキスで目覚めさせるところなのだが。

俺は、ルルシーの肩を揺さぶって起こした。

というのも、ルルシーが酷く…苦しそうな顔で寝ていたから、である。

昨夜の俺ほどではないが…夢見が良くないのは明らかだった。

「おはようございます、ルルシー。目が覚めました?」

「…ルレイア…。お前…大丈夫か?」

「そりゃこっちの台詞ですよ」

自分だって、さっきまで悪夢見ていたんでしょうに。

何でまず俺の心配をするんだ。

ルルシーはのろのろと起き上がった。

その顔色は、あまり良くない。

「悪い…。寝てしまってたみたいだ」

「やっぱりズルしたんですね?起こしてくださいって言ったじゃないですか」

ハナから朝まで起きて、俺を見守ってるつもりだったな?

そーいうズルするから、寝落ちしちゃうんだよ。もう。

「…それより。お前、大丈夫なのか?体調は」

あ、話逸らした。ずるーい。

「大丈夫ですよ」

「悪夢は?昨日は見なかったのか」

「…んー…」

見てないですよ…と。

…言えたら、良かったのだけど。

残念ながら、悪夢は見た。

「…見ましたよ。また…昔の夢」

俺がそう言うと、ルルシーは目をかっ開いて、身を乗り出して俺の肩を掴んだ。

あら大胆。

「大丈夫なのか!?済まん、俺が見張ってなかったから…!」

「いや、嫌な夢は見ましたけど、平気ですって」

「本当に!?無理を…」

「してないですよ。本当に平気です。確かに悪夢でしたけど…一昨日と比べると、全然マシだったので」

一昨日に比べたら…そうだな。半分くらいかな?ダメージ的には。

確かにしんどかったけど、うなされるほどではなかった。

夢の内容は、一昨日と大して変わらない。

でも、鮮明さと言うか…リアリティが、一昨日よりも薄かった。

だから、何とかうなされずに済んだ。

嫌な夢だったけど、「嫌な夢だったな」と気分を悪くする程度で済んでる。

一昨日みたいに、我を失うほどではない。

それは幸いだった。

だが、今は俺のことよりも。

「…ルルシー。俺よりも、あなたは大丈夫ですか」

「は?俺…?」

そう、ルルシーだよ。

今は、俺よりもルルシーの方が心配だ。
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