婿入り希望の御曹司様とCool Beautyな彼女の結婚攻防戦〜長女圭衣の誰にも言えない3つの秘密〜花村三姉妹 圭衣と大和の物語

大和

先程、コンシェルジュから来客がこちらへ向かっていると連絡があった。緊張気味な僕はソワソワして落ち着けず、玄関に続く廊下を行ったり来たりして彼女を待っている。




一昨日、紫道君から指輪を受け取り、圭衣ちゃんの近況を涼介、仁、そして雅と一緒に聞いた。想像以上の被害が圭衣ちゃんだけでなく、彼女を助けてくれている紫道君にまで及んでいたなんて。しかも、犯人が自分の兄である烏丸悠士だったことを確信した日でもあった。


この時、紫道君からの提案で圭衣ちゃんと会い、誤解を解くための場を設ける約束をする。僕は迷わずこのマンションに来てもらうことにした。だって、秘密の部屋を見てもらい、僕の全てを知って欲しいから。




そんなことを振り返っていると、かすかにヒールの足音が聞こえた気がした。しばらく待ってもインターフォンは鳴らなかったので、気になる僕はドアをそっと開けてみる。そこには驚いた顔の圭衣ちゃんが立っていた。


久しぶりに会いたかった彼女が、僕の目の前にいることに嬉しさが込み上げてくる。その一方で、痩せて疲れ果てた彼女の姿に愕然とし、良心の呵責(かしゃく)(さいな)まれた。


圭衣ちゃんをこんなにも苦しめた根源は、他でもない僕なんだ。


「い、いらっしゃい、圭衣ちゃん。下から連絡が来たから。さあ、上がって」

「お邪魔します」


覇気のないか細い声の彼女をリビングに案内する。どこかよそよそしい彼女を少しでもリラックスしてもらおうと、圭衣ちゃんの好きなローズブレンドの紅茶と甘酸っぱいフランボワーズマカロンを用意した。


僕の目の前に座っている圭衣ちゃん。家に入ってから1度も僕を見てくれず、俯いている。紫道君には聞かされていたが、一回り小さく感じるくらい痩せてしまって……。僕はこれから彼女に償うことができるのだろうか?


とにかく誠意を見せ、まず悠士兄ちゃんのことを謝罪して、それから僕が出て行った日のことと、キラリの件の説明と秘密を順に打ち明けていく。


彼女の受け答えは素っ気ないが、僕を無視することはない。きちんと応対してくれることに希望を持つ。

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