諦めたはずの恋なのに、再会した航空自衛官に秘密の双子ベビーごと愛されています

彼女への想いと空への誓い(伊澄SIDE)

 Fー15に乗り込んだ伊澄は、百里基地を飛び出し洋上の訓練空域にいた。
 今日の最後の任務、二機対二機の接近戦訓練に挑んでいるのだ。

「マック、俺が前に出る」
「オージさん、了解」

 すぐ斜め上を飛んでいたウィングマンのマックこと清水(しみず)が下方へ離れていく。

 彼はFー15操縦課程を修了したばかりの新人で、防大卒の二十六歳。素直で伊澄に憧れる彼は、伊澄が手をかけている後輩だ。

 模擬戦の相手二機は現在、向かって右方向にいる。伊澄は操縦棹を左斜め下に倒した。Fー15は機体を九十度回転させ、急旋回する。
 伊澄は手元のレーダーで、相手機に後方から追われる形になったのを確認した。

 この訓練は、操縦技術向上のための模擬戦だ。
 いくら机上で議論したところで、実践で活用できなければ意味がない。
 戦闘機パイロットならではの判断力とその通りに機体を動かす操縦術は、実践を繰り返して身につけるしかないのだ。
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