諦めたはずの恋なのに、再会した航空自衛官に秘密の双子ベビーごと愛されています

彼の仕事と揺れる気持ち

 翌日、複雑な想いを抱えたまま帰路についた。小松から新幹線に乗り、東京で在来線に乗りかえる。

 子どもたちは初めて乗る電車に興奮し、楽しそうに色々と話しかけてくれた。
 おかげで気が紛れたが、それでも心の雲が晴れることはなかった。

 最寄り駅に着き、子どもたちの手を引きバス停に向かう。

「もう少しでお家に着くからね」

 そう言いながら、駅舎の階段を下りていると、不意に瑞月が立ち止まった。

「いすみ!」

 瑞月がそう言って、階段の下を指差す。
 階段を下って正面のカフェのテラス席に、彼がいた。

 だけど、私の胸は嫌なふうに震えた。彼の隣に、楠木さんが座っていたのだ。
 ふたりはなにやら、真剣な顔で話をしている。

 私は伊澄さんと結ばれた。お付き合いをしている。
 それは分かっているのに、胸にやってくるのは敗北感だ。
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