諦めたはずの恋なのに、再会した航空自衛官に秘密の双子ベビーごと愛されています
第七章

私に一番必要なもの

 良く晴れた、日曜日。からっとした空気が、太平洋側の冬を思わせる。

 今日は朝から黒木さんが我が家にきて、子どもたちと遊んでくれていた。
 その間に出かける準備を済ませた私は、黒木さんに断って伊澄さんのもとへと向かった。

 今日は、デートの日だ。

『一度ふたりで、きちんと話そうか』

 あの日の彼のその言葉を、今日、果たす約束なのだ。

 再び黒木さんにお世話になってしまうのは申し訳ないけれど、伊澄さんがきちんと寄り添おうとしてくれるのだから、応えたいと思う。

 自宅から少し離れた場所で、伊澄さんに車で拾ってもらった。
 そのまま彼は車を走らせ、太平洋を望める海岸へと私を連れてきてくれた。

 真冬の海岸は、他に誰もいない。寄せては返す波の音がするだけで、とても静かだ。

「レストランを予約してあるんだが、その前に少し、歩いてもいいか?」

 こくりと頷き、私は伊澄さんと海岸へ降り立った。
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