諦めたはずの恋なのに、再会した航空自衛官に秘密の双子ベビーごと愛されています

怖がりな想い(伊澄SIDE)

 今日の伊澄は当直。アラート待機だ。

 上空の寒気が南下し、日本海側や東北、北海道は吹雪いているらしい。雷も発生し、滑走路も凍っていると聞いた。
 戦闘機は全天候型に作られているが、滑走路が使えなければ飛ぶことはできない。今夜なにか起きれば、百里基地からのスクランブル発進率が高い。

 だからこそ、こんな気持ちでいてはいけない。そう思うのに、どうしても頭に千愛里のことがつかえていた。 

 アラート待機小屋の中、リラックスして漫画を読み耽る清水を横目で見ながら、伊澄はこの間のことを思い出していた――。


 彼女をふたりきりのデートに誘った。海岸で想いを伝え、受け止めてくれたらレストランでプロポーズする。その予定だったのだ。

 前半はうまくいった。戦闘機パイロットとしての使命、任務、想い。伝えると、千愛里は複雑そうな顔をしたけれど、そんな俺の想いを受け止めキスに応じてくれた。

 これからも、千愛里のために、この国の平和のために飛ぶ。
 千愛里のそばで、今度こそ彼女を愛し抜くのだと誓いながら、レストランへ向かった。
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