諦めたはずの恋なのに、再会した航空自衛官に秘密の双子ベビーごと愛されています
第一章

大きな空に憧れて

 五年前、石川県小松(こまつ)市。私はその日、仕事のお昼休憩を利用して、航空自衛隊小松基地の航空祭を訪れていた。

 航空祭とは小松基地で毎年一回秋に行われる基地の一般開放のことだ。

 基地内に入れるだけでなく、普段は見られない戦闘機や輸送機などの飛んでいる姿を間近で見ることができるため、地元住民だけでなく全国各地から航空ファンが訪れる――らしい。

〝らしい〟というのは、生まれも育ちも小松市で、小松から一歩も出たことのない私だけど、航空祭に来るのは初めてだからだ。

 実際に訪れると、子どもの頃、親に絶対に行くなと言われていた意味がよく分かる。とにかく、すごい人だ。
 前にテレビで見た、テーマパークの開園映像を思い出した。

「千愛里、こっちだ」

 基地内に入ったところですぐ、先に来ていた幼なじみの杉下(すぎした)大雅(たいが)が、恋人を抱き寄せながら私に大きく手を振った。
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