諦めたはずの恋なのに、再会した航空自衛官に秘密の双子ベビーごと愛されています
第二章
打ち砕かれた夢
梅雨に向かうこの季節らしい、弱い雨が朝から断続的に降っている。
私は父に連れてこられた呉服屋で、着たくもない振袖に袖を通していた。
『これから、お前の結婚相手に会いに行く』
あの日から一週間が経った今朝、唐突に父にそう言われた。
当日まで私に言わなかったのは、私を逃げられなくするためだろう。先週の外泊を許可してくれたのも、今日のことがあったからかもしれない。
父の会社が倒産しかけていると聞いたのは、岩国から帰ってきた翌日だった。
仕事に行こうと家を出たところで、父の会社――帆風鉄工の副社長である水島さんに聞いたのだ。
水島さんは父と同じくらいの年齢だけれど、父と違って人当たりがよく、優しい人だ。
たまに父に夜食を届けに行くことがあるが、その時には必ず声をかけてくれる。
そんな彼がその日、家の前で深刻な顔をして私が出てくるのを待っていた。
そして私を見つけると、その白髪交じりの頭を唐突に下げてきた。
『千愛里ちゃん、本当に申し訳ない』
私は父に連れてこられた呉服屋で、着たくもない振袖に袖を通していた。
『これから、お前の結婚相手に会いに行く』
あの日から一週間が経った今朝、唐突に父にそう言われた。
当日まで私に言わなかったのは、私を逃げられなくするためだろう。先週の外泊を許可してくれたのも、今日のことがあったからかもしれない。
父の会社が倒産しかけていると聞いたのは、岩国から帰ってきた翌日だった。
仕事に行こうと家を出たところで、父の会社――帆風鉄工の副社長である水島さんに聞いたのだ。
水島さんは父と同じくらいの年齢だけれど、父と違って人当たりがよく、優しい人だ。
たまに父に夜食を届けに行くことがあるが、その時には必ず声をかけてくれる。
そんな彼がその日、家の前で深刻な顔をして私が出てくるのを待っていた。
そして私を見つけると、その白髪交じりの頭を唐突に下げてきた。
『千愛里ちゃん、本当に申し訳ない』