諦めたはずの恋なのに、再会した航空自衛官に秘密の双子ベビーごと愛されています

優しさに助けられて

 機械のような毎日を過ごし、二週間が経った。

 航空博物館での仕事は伊澄さんがアラスカに発ったあの日に辞め、今は帆風鉄工の一員として事務職を担っている。
 水島さんが主だって仕事を教えてくれるので、少しは心が楽だ。

 従業員の皆には、暗い気持ちになって欲しくない。だから、私はつとめて笑顔で仕事に挑んだ。
 博物館で接客業務をしていたおかげで、作り笑いは得意だ。

 それでも、この場所にいると、空を飛ぶ戦闘機を見かけることがある。今はあそこに伊澄さんはいないけれど、その度に罪悪感に襲われた。
 彼を傷つけた後悔が、なくなったわけじゃない。

 明日は結納だ。父の会社を救うため、私はあの男と結婚する。

 神崎さんとの結婚後、帆風鉄工は神崎電機工業の傘下に入りグループ化して事業を続けることになっている。
 神崎電機工業としては、最初からそれが狙いだったのだろう。グループ化から帆風鉄工が逃げないよう、保険として私に次男を嫁がせたかったらしい。

 あの男と結婚したら、もう本当に逃げられない。だけど、空飛ぶ戦闘機を見た時に、伊澄さんの幸せを願えるならそれでいい。
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