このほど、辣腕御曹司と花嫁契約いたしまして
恋心




真矢はあれから岳のマンションに住まわせてもらっている。

疲れが取れるまでは休むようにいわれ、久しぶりにゆっくりさせてもらった。
すっかり回復すると、真矢は明都ホテルグループ本社に新たに作られた部署に出勤することになっていた。
そこは対鶴楼の新たな経営案を作成する経営企画部の分室なので、すべて岳の指示だろう。

対鶴楼からの出向社員という立場だが、岳からは対鶴楼の経営での問題点や土地の様子など、真矢にしかわからないことを手伝ってくれればいいと言われている。
分室では森川がリーダーで、経営企画部長としてほかにも仕事を抱えている岳はたまに顔を見せるくらいだ。

初めに取り組んだのは、真矢が思いついた対鶴楼の別館を作る計画だった。
別館にふさわしい町の古民家を調べたり、その中から所有者がはっきりしている物件を精査したりするのも真矢の仕事だ。
現地をよく知っているし、遠藤の祖父たちの情報網もある。言葉上手な不動産会社より正確かもしれない。
真矢の情報を得てから、森川たちが買取価格やリノベーションの費用を算出していく作業に移る。

「外観はそのまま生かしたいね」
「内装は明るくして、ホテルのような洋間にしたらどうでしょう」
「若手建築デザイナーたちのアイデアをコンペティションで競うようにしたら話題になりそうだな」

森川たちと話しているといくつもアイデアが浮かんでくる。
分室では誰もが自由に意見を言えるし、和気あいあいとした雰囲気だ。

真矢は銀座のホテルの宴会企画部も好きだったが、ここはもっとやりがいがある。
毎日ワクワクしながら本社で働いていた。



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