このほど、辣腕御曹司と花嫁契約いたしまして
よりどころ


真矢は明都ホテルに勤めていたころの同期同士の結婚式に出席するため、東京に来ていた。
六月中旬の土曜日。式と披露宴が終わって、真矢たちは二次会が開かれるカフェバーに移動したところだ。

いつもなら真矢が金曜日から日曜日まで休みをとろうとしたら渋い顔をする女将が、なぜか今回はあっさりと認めてくれた。
まるでこの週末だけは、真矢が対鶴楼にいない方がいいような扱いでもあった。

最近の叔父夫婦は、どうも様子がおかしい。
支配人室にこもってコソコソと話しあっていたり、書類を見ながらため息をついていたりする。
陽依はいつもと変わりないから心配しなくてもいいかもしれないが、なにか違和感があった。
そんな時期に休みをとるのは不安だったが、友人たちに会えるうれしさの方が勝った。

「いい結婚式だったね~」
「花嫁、とってもきれいだったわ」

友人たちの言葉に、真矢はハッと我に返った。

(今日くらい、仕事のこと忘れなきゃ)

披露宴があった渋谷のホテルからも近い、恵比寿の店を貸し切ってのパーティーの最中だ。
テーブル席とテラス席が自由に行き来できるとあって、乾杯のあとは皆が気ままに過ごしている。




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