すべてはあの花のために①

一年生ver.もあるの?!




「…………あ。あたしAだったわ。あんたは?」

「あたしもAだったー。Sクラスには届かなかったかー、残念。でもまた今年も同じクラスだね!」

「はあ。また今年も、あんたのお守り頑張るわ」

「そんなこと言ってー、本当は嬉しいくせに?」

「……早くしないと置いてくよ」

「(あ、照れた)待ってよー!」


 多くの生徒が、学年末試験とクラス発表の結果で一喜一憂している中。肝心の葵はというと……。


「(わたしのクラスは………………よかったあ。Sクラスだった)」


 実は内心ビクビクだったり。
 しかし、それは表に出さず。しっかりと微笑みを貼り付けて、上手く隠していた。


「(てかあの二人はAクラスなのか。なんか、仲良くなれそうな感じだったんだけど……Sクラスだったら、また話せるかと思ったのにな。……いや! 諦めちゃダメだぞ葵くん! 千里の道も一歩から! ここは積極的に、自分からいけ――)」

「おはようございます葵様!!」

「(ぬあっ!?)」

「ああ、今日もとってもお美しいですわ! あ! 葵様もSクラスなのですか? 私もなんですー! また今年も毎日同じ教室で葵様のお姿を拝見し、同じ空気を吸えるだなんて! 私これから楽しみで仕方ありませんわ!! あ! これはやっぱり毎日カメラを持参して【葵様の学校生活二年生ver.】を作成するべきですね! やっぱりここはデジカメではなく一眼レフにするべきでしょうか? でしたら! 今日持ってきておいて正解ですわ! そして帰ったらきちんとバックアップをとって、アルバムにして、そしてそれを見ながら…………ああー! もう楽しみで仕方ありませんわ!!」


 友達作り第一歩を踏み出そうとしたところで、熱烈変なファンの人に絡まれてしまった。

 どうやら彼女。去年から葵を慕ってくれているらしく、こうして話しかけてくれているが、尊敬のまなざしで見られているため、友達にはまだまだなれそうにない。


「(一年生ver.もあるの?!)」


 突っ込みどころがズレている葵は今日も絶好調のようだ。
 確かに、気にならんこともないけど。



 ちなみにここ桜、クラスは一学年ごとに【S・A・B】の三クラスに分けられている。その中でも一番上のSクラスは、ABクラスとは別の校舎にあり、少しばかり校舎が綺麗めに造られていたりする。

 他にも校内には、そのSクラスを収める校舎の他に、ABクラスや移動教室などで使用する、専門教科の教室を収める大きな校舎と、その端に乗っかるようにしてある講堂。少し離れた場所に、ライブ会場等で使用できるほどの屋内競技場があり、それら全て渡り廊下で繋がっている。

 まだまだ諸々の施設があったりするが……どうやら今年も葵は、またあの校舎にお世話になるようだ。


< 10 / 254 >

この作品をシェア

pagetop