すべてはあの花のために①
五章 決定

今日のお昼はトムヤムクンでいい?




 それは葵が生徒会室に慣れた頃の話。


「新入生の歓迎会?」

「あー。もうそんな時期だっけかー」

「そっか! なんだか楽しみだねっ」

「♪♪」

「去年はどこに行ったんだっけー?」

「確かグアムじゃなかった?」

「えー。そんな何回も行ったことあるとこ、今年はやめてよ」

「でも、ご飯は美味しかったわよね?」

「……デザート」


 はいはい。あなたは相変わらずブレないね。
 ……それはそうと。


「歓迎会って?」


 そういえばそんなこともあったけど、編入してきたばっかりでバタバタしてたから、去年葵は不参加にさせてもらっていた。


「歓迎会っていうのは、まあ言い過ぎだな」

「そうね。大まかに言うと、生徒会が企画した旅行に、新入生の引率でついて行くだけね」

「それが、去年はグアムだったと」


 だから、そんな金があるなら……って。言っても切りがないのでやめておこう。


「というわけで、今年の歓迎会を今から企画したいと思う」


 何が、というわけだ。君たちはとにかく説明すっ飛ばす節が――――


「はあーい」
「(こくこく)」


 ……返事、イイデスネ。


「ねえ秋蘭、日程はもう決まってるの?」

「ゴールデンウィーク明け後、二泊三日だ」

「……へえー。そうなんだ。ゴールデンウィーク明けとかダルいねー」

「今年はどうするのー?」

「だからそれを今から決めようとしている」

「どうせまたハワイとか言うでしょう? アタシもう飽きたわよ」

「オレは電波通ってたらもうどこでもいい」

「すごい大きなスクリーンとかあったらいいと思わない?」

「??」


 葵とチカゼは目を合わせている。今の一瞬で、彼女に何があったんだろうか、と。

 そういえば最近、彼の姿を生徒会室で見ていない。いや、Sクラス以外で見ていないんだ。まるで彼女のことを、避けているような――――……


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