すべてはあの花のために①
sideチカゼ
「――おいっ! 待てって!」
その頃、キサを追いかけていたチカゼ。
「さっき、あいつはああやってキツい言い方したけど」
「わかってる」
やっとのことで追いついた、いつもの帰り道。どうやらキサも、葵の意図はきちんとわかっていたようだ。
「あたしが、会議にも参加しない、人の話も聞けない状況だったから、そう言ってくれたんだって。……だから、ちゃんとわかってる」
「だったら、どうしてオレがここまで来たのかもわかってるんだろ? ……キサ、何があった」
しかしキサは、固く口を閉ざしていて話す気はないようだ。「だったら……」と、チカゼはきちんとキサの目を見て伝える。
「悪い。そこまでは聞いちゃいけなかったのかもしれない。でも、どうしてそんなに苦しそうなんだよ。オレはお前の友達でもあるけど、その前に幼馴染みだろ? 心配ぐらいさせろ」
「ちか……」
「ま、人の受け売りだけどな」
「絶対それ、あっちゃんじゃん」
「オレも、あいつに話聞いてもらっちまったからよ」
そうおちゃらけているチカゼだったが、心底心配でたまらなかった。
「その言い方、ちょっとズルいね。ここで言わなかったらあたし、あんたの友達でも幼馴染みでもないって言ってるようなもんじゃない。……あたしは、そこまで酷い女にはなれない」
「知ってる。だから聞いてんだ。オレも、諦められないから」
「(……諦められない、か)そっか。じゃあ、どうしてそんなに苦しそうなのかって方にだけ、答えておこっかな」
そうして、彼女は衝撃の事実を語り出す。
「あたし、学校辞めるんだ」