すべてはあの花のために①
六章 勇気
sideキサ
波打つ音に混じり、砂が擦れる音が、少しずつ大きくなっていく。
「(……よかった。来てくれないかと思った)」
朝日で綺麗な金色に輝く彼女の髪が、ふわり風に靡く。
「ありがとう。来てくれて」
「最後、だからな」
いつも皺くちゃの服しか着ないのに。
今日のカジュアルな服装は、普段わかからない細身な体に、よく似合っていた。
「さてと! 今日はどこに行こうかな?」
「お前の望むところへ連れてってやるよ」
ふたりは顔を見合わせて笑った……つもりだったが、どうしても上手く笑えなかった。