すべてはあの花のために①

誰かをぶっ飛ばしたくて仕方ありません




 5月。だんだん暑くなってきて、もう夏だなと感じさせる陽気が続く。今ではもう、ブレザーを着ている生徒はあまり見られない。


「(明日からゴールデンウィークかあ。……そういえば昨日、あの二人を学校で見なかったな? どうしたんだろう? それにしても、明日から三日間みんなとは会えなくなるな。次に会うのはゴールデンウィーク明けの歓迎会――)」

「――っ! ――――ろっ!」


 今は放課後。校舎内に残っている生徒はほとんどいないはずだ。


「(どっ、どうしたんだ?)」


 よく聞いてみると、それは理事長室から聞こえてくる。


「(何かあったのだろうか)」


 葵も理事長室に用事があったので、入るのを躊躇ってしまう。


「(でも、どこかで聞いたことある声だ)」


 扉に耳を当てて中の様子を伺うと……。



「どういうことなんだよ理事長! キサちゃんはもう学校に来ないって!!」


 ――中から、カナデの悲痛な声が聞こえた。


「(……どういうことだ?)」


 キサは確かに、『いつかはまだわからない』と言っていた。


「(でも、まさかこんなに急なんて……)」


 違う。彼女は、最初から知っていたんじゃないのか?


「(それなら、キサちゃんはわたし達に嘘をついていたってことだ)」


 でも、それなら何故チカゼは何も言わなかったのか。


「(……違う。言えなかったんだ)」


 歓迎会の集計に行く時、確かに彼らは話をしていた。


「(でも、確かあれは――――)」


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