すべてはあの花のために①

秘密が秘密じゃなくなってやいないか?



 新入生歓迎会当日。現在、葵たちは新入生とともに四国へと向かっていた。

 交通手段は、お金がもったいないという葵の強い希望により、学校のジェット機ではなく通常の新幹線と電車を乗り継いで。お金持ちの皆様なら、逆に新しいでしょう。
 しかし帰りは少しの区間船を出してもらうことに。理由は時間の都合上。

 その新幹線の中で、【女王様の奪還作戦】をみんなに話すことに。


「というかアンタ、キサのこともう大丈夫なの?」

「おお。もう大丈夫だぞー。てかオレは、こいつらにも心配かけちゃってたのか」

「えー今頃気付いたのー? だだ漏れだからー」

「すまんすまん。まあちゃんとキサは連れて帰るから。安心して、歓迎会楽しんでこい」


 キクはそう言ってヒナタとオウリの頭をぐしゃぐしゃに撫でる。二人とも嫌がってはいるものの振り払おうとはしなかった。


 その後の話し合いにより、奪還には、葵・チカゼ・キクの三人だけで行くことになり、残りのみんなには新歓のことを頼むこととなった。
 初日の宿に到着した葵たちは、すぐに徳島の桐生家へ行く支度をする。


「……ヒナタくん? どうしたの?」


 気付けば、彼は近くの椅子に座っていた。けれどあまり時間がない葵は、申し訳なかったが準備をしながらで彼に声をかけることに。

 しかし、来たもののなかなか話そうとせず。致し方なく辛抱強く待ってあげる。

 彼が口を開いたのは、葵の準備が終わろうとしてた頃だった。


「……あのさ」

「なに?」

「絶対成功させてよ。キサとキクたちのこと、頼んだから」

「(まさか、君がそんなことを言うなんて)」


 彼にとってのスマホは、もしかしたら安心材料でもあるのかも知れない。握り締めている手は、ぎゅっと力が入っていた。

 準備が終わった葵は、鞄を閉めて彼の目の前へ。


「(そっか。君もなんだね)」


 いつも彼女と一緒にチカゼを弄っている仲。心配の度合いは変わらない。寧ろ本当は誰よりも大きいのかも知れない。

 じっと見上げてくる彼の目は真っ直ぐで、それでいて少しも揺らいではいなかった。


 葵は答える代わりに、握り締めている彼の手を、上から包み込むように握った。


「(成功する。させるよ、絶対に)」


 ――でも、もし上手くいかなかったら?


「(すぐにでも、『大丈夫だ』とか。『絶対に連れて帰ってくるから』とか。言ってあげたいけど)」


 本音を言うと、すごく……怖い。


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