すべてはあの花のために①
ぶっ壊しますかあ!
11時ジャスト。
「(とうとう始まってしまった……)」
葵たちは、控え室で自分たちの出番を待っていた。
キクは、イライラし過ぎてさっきからずっと煙草を吸っている。チカゼなんかは、手に人と書いて飲み込むのを、かれこれ30分前ぐらいから永遠としている。
「(……取り敢えず流れをもう一度確認しておくか)」
まずは人前結婚式があり、その後結婚披露宴が始まったら、葵たちは余興で乱入する手筈となっている。
披露宴が始まって早々に乗り込んでぶっ壊すことになるが、それは致し方あるまい。
「(できればキサちゃんに、遅れてでもドロケイに参加してもらいたいというのが、わたしの願いだから)」
「おーい。大丈夫かー?」
「チカゼくん顔真っ白だぞー」
そろそろ時間なのだろう。一緒に乗り込む両家の父の登場だ。
「お二人も心の準備はバッチリですか?」
「「もちろん!」」
率先してやると言ってくれた彼らの、なんと心強いこと。
そうこうしているうちに、スタッフの人が呼びに来てくれる。
「そろそろお時間ですが、準備はよろしいですか?」
「あ、はい! 大丈夫です!」
今回飛び入り参加という形にさせてもらっている葵たち。係の人たちは勿論知ってはいるのだが、ぶち壊すこと自体は進行係の人しか知らない。きっとその人は今頃、トーマと一緒に笑いを堪えているに違いない。
「あ!」
「うわあっ! ビックリしたあ。……な、何だよいきなりデカい声出して」
「ちょっと土壇場で悪いんですけど、提案があるんです!」
葵は、新たな作戦案を伝える。
「そんなギリギリで? 大丈夫かよっ」
「ちょっと別行動になるけど、やることは変わらない。そうでしょう?」
「あーそうだな。それは変わらない」
「っ、しょうがねーな! いっちょやってやるか!」
「そっちの方が絶対面白いしね!」
「いやあ楽しみだね!」
「じゃあちょこっと作戦変更したことは、お母様たちには伝えておきますね!」
そう言って、一応メッセージだけ入れておく。
何かあったらいけないので電源だけは入れておいてもらうようお願いしていた。
「さあ! ぶっ壊しますかあ!」
そして五人は会場へ向かったのだった。