すべてはあの花のために①
十章 帰還

ござるよっ?


 移動の車の中。
 只今時刻は、13時を回ったところ。


「キク先生! どうせイチャイチャしてたんでしょ! ドロケイに間に合わなかったらどうするんですか!」

「おーすまんすまん」

「お前ら、そんなことしてたのかよっ!」

「どうしたーチカ。顔が赤いぞ」

「おい! 否定しろよ!」

「(……ぽっ)」

「いやキサちゃん。そこで赤くならないで?」

「それはそうとお前さん、トーマとはちゃんと話せたのか?」

「え…っ!?」

「「「え?」」」

「……ちゃんと、はなしたで。ござるよっ?」

「おいおい動揺し過ぎじゃ――……あ」


 バックミラーにキクのにや~っとした顔が映り込む。


「さては。お前さんも実はイチャイチャしてたんだろー」

「!?!?」

「あ、あっちゃん? 否定しないの?」

「お、おい! そんなことしてないよな?! なあ!!」

「そ、そんなこと。するわけないで……おじゃるよ」

「おいおいおい、隠せてねーからそれ」

「えー! あっちゃんいつから? いつから杜真とそんな仲に?

「だ、だから! そんなことしてないでおじゃ――」

「じゃあどんなことしたんだー?」

「足を持って振り回して投げ飛ばしました」

「「(トーマ体張り過ぎだろ(でしょ))」」


 ちなみにチカゼは途中から「いちゃいちゃ……」と言いながら気絶しています。


「それはそうと先生、あとどれくらいで着きそうですか?」

「そうさなー。あと30分はかかるか」

「おいキク! もっと飛ばせっ!」

「そんなこと言うなよ。これでも一応高校教師なんだぞ」

「その高校教師は教え子に手、出したけどな」

「…………(※キクは泡を吹いた▼)」

「き、菊ちゃん!?」

「頑張ってくれたら、この後キサちゃんからのご褒美があるかもしれませんよ」

「あ、あっちゃん?! ご褒美って何?!」

「え? それはまあ、キ――」

「お前らしっかり掴まってろ。あと10分で着かす」

「おいおい! どんだけなんだよっ!」

「ちょっと菊ちゃん!? 何期待したの?!」

「(キサちゃんからもらえるならなんでも嬉しいと思うよって、言おうとしただけなんだけど……)」


 これはこれで面白そうだから、葵は黙っておくことにしたのだった。


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