すべてはあの花のために①

おっ、……おねがいちまちゅっ!




 その後見事警察側が勝ち、豪華賞品として、四国3泊4日のぶらり旅チケットをゲットしました。どうやら、いつでも利用できるそうです。……恐るべしお金の力。


 ♪~♪


「(…………おっきい船でよかった)」


 キクとも合流し、帰りの船に乗って大阪の港を目指していた時。海をボーッと見ていた葵のスマホにお呼び出しが。音楽が鳴り止まないので、どうやら電話のようだ。


「はい。もしもし?」

『もしもし葵ちゃん?』

「! はいっ。あの後どうでしたか?」

『ばっちり。両本家たじたじ』

「何を言ったんですか何を」

『でもこれで、ようやく丸く収まるよ』

「そうですね。……本当によかったです」


 海風が葵の髪を攫っていく。
 その地平線をまたぼーっと見ていたせいで、トーマからの呼びかけに一瞬遅れた。


「すみません! 何ですか?」

『今誰か近くにいるかなって』

「今は……あ。ヒナタくんが一番近いです。でも電話の声は聞こえないと思いますよ?」

『そっか。じゃあ、そのまま聞いてくれる? あ、顔は気を付けてね』

「え? 一体どういう――」

『葵ちゃん。君は一体【何者】なのかな』


 その質問に、葵は一瞬顔を顰めた。
 けれどすぐに、得意の笑みを貼り付ける。


 しばらくの間、二人の間には沈黙が続いた。


「仰っている意味がよくわかりませんが?」

『ん? そのままの意味だけど』


 ならば、そのまま答えさせてもらおう。


「わたしは、【わたし】ですよ。他の誰でもなく」

『……そっか』


 彼の声は、少しだけ寂しそうに聞こえた。


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