すべてはあの花のために①

side……




「本当に。……本当に大きな一歩だよ」


 理事長は、例の隠し扉へと向かう。

 そこから出てきたのは、以前と同じもの。鍵穴の付いた、花の装飾が施された木箱。


 彼は、首から提げていた小さな鍵で、もう一度その箱を開けた。

 その箱の中から、ゆっくり取り出したのは――……牡丹の花。



 その花を取り出し、箱を元に戻す。


 そしてその金庫からもうひとつ。ひと回り大きな木の箱を取り出す。
 同じように鍵穴があるが、この箱は何も装飾はない。

 そして、その少し大きめな鍵穴は、古びた(、、、)箱によく合っている。


 その箱も同じように、首から提げたもう一つの、錆びついた大きめな鍵で開ける。



 そこは13の部屋に分けられていた。縦横4つずつに分けられ、中心は仕切りが外されているのか、まわりの仕切られている12の部屋の4つ分の大きな部屋になっている。

 箱の中のひと部屋に、すでに静かに佇んでいる――……薔薇の花。


 彼はその中に先程の牡丹を、静かに壊れてしまわないように入れる。



「これと……あとは、これもかな」


 彼はどこからか、丁寧に運んで来たその花もゆっくりと入れた。

 それは、――菊の花。 そして……――ツツジの花。



 彼は、その花たちを移し終わると、また鍵を閉めて金庫に戻す。
 その箱の中心の大きな部屋には、もう朽ちていて、何の花なのかもわからないようなものが、……静かに存在を消していた。


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