すべてはあの花のために①
せっ、せめて庶務って言ってえぇ……!
「と、いうわけなんだけど? 桜吹雪のあっちゃん?(ぷっ)」
「この動画をばらまかれたくなかったら(ぶっ)」
「お、おれっ、らと、いっ、いっしょに(ぶほっ)」
「ああーもう無理! あははは!! アンタ本当最高! 超ウケる!!」
弟にバカにされた後は、兄に笑い物にされた。
「……っはあ、はあ。はあぁ。あー笑い死ぬかと思った! それで? 道明寺さん、どうする??」
大体収まったのか、半笑いしながら桜庭さんが問いかけてくる。
葵、人生最大のピンチか!?
――だが。
「あら、桜庭さん。とっても面白い動画をお持ちなんですね。けれど、その方は一体どなたなんでしょう? 薄暗くてハッキリ見えませんでしたわね、オホホ」
そう。若干テンパっていて口調がおかしくなっている葵が言うように、動画が撮影されたのは日が沈みかけている時刻。つまり黄昏時。人の見分けがつきにくい時間帯だ。
高いビルに挟まれていたこともあってか、辛うじて性別がわかるくらいで、動画だけではハッキリ誰だとはわからなかったのだ。
声はバッチリ聞こえていたけど、それだけで判断するのは難しいだろう。声紋判別機械辺りを持ってこられたら、ジ・エンドだけど。
葵は、胸を張って自分ではありましぇんアピールをして、その場をなんとかやり過ごそうとした。……のだが。
「どーしてもしらばっくれる気だな? ……できれば、手は出したくなかったけど――なあっ!」
そう言いながらいきなり拳を振り上げた柊くんが、何故か葵の方へ駆け出してきたのだ。
「(いやいや待って! どうゆうことー?!)」
葵を確実に狙ってきたその拳は、躊躇いなく振り下ろされた。