すべてはあの花のために①
……どっ、どう、いたしまして……っ
「おーい。お前ら話長えよ。先生もう理事長の相手疲れたぞ」
そう言って、本当に疲れた顔をして入ってくる朝倉先生。正直元からダラダラしてるところがあるから、そこら辺は本当かよくわからないけど。
「すまない待たせて。道明寺は生徒会を引き受けてくれるそうだ。それで今はお互いを知ろうと自己紹介をしていたところだ」
一度葵の方に視線をやり、さらっとそんなことを言ってのけるアキラ。
おーい。さっきの飴はどこにやったー?
「おーそうだったのか。それで? 誰まで言ったんだ」
「アタシたちは全員済んだから、あとは彼女だけよ」
ちょうどその時、理事長も部屋に戻ってきた。
またゴールできなかったのか。俯いている顔からは、尖った口が見えていた。
「そうか! 道明寺さんやってくれるか! いやあよかったよかった!」
それから。事情を朝倉先生から聞いた理事長は、そう言って嬉しそうに喜んでくれた。本当に嬉しそうな表情だった。
どうして、そこまで喜んでくれるのだろうか。
「そういえば自己紹介の途中らしいじゃないか! さ! 続けて続けて!」
「(って、残ってるのわたしだけだし!)」
葵は先生や理事長の前だったため仮面を着け、そこはさらっと自己紹介を終えた。
「(それにしても、やっぱりまだわからないことがある)」
引っ掛かりを覚えた葵は、スッと肘を曲げた状態で手を上げた。
「あの、少し気になったことがあるのですが、いいでしょうか」
そう話しを切り出した葵へ顔を向け、静かに聞く体勢をとった面々。
「一つは、あまりにも彼らが理事長室に慣れすぎている……というより理事長自身と親しいというか。中学生の時から彼らは生徒会をしていたみたいだったので、そのせいかとは思いましたけど」
葵は一本立てた指を元に戻し、首を傾げながら顎の前にその手を置く。
「もう一つは何故わたしを生徒会に引き止めたのか。彼らには、それは異常なほど説得されました。でも代わりの人はいくらでもいるはずです。それに理事長もなんだかんだ嬉しそうですし……」
最後は尻すぼみになりながらも話しきった葵に。
「じゃあその質問には私が答えようかな」
そう話し出したのは理事長。
久し振りに見た真面目な顔に、思わず緊張が走った。
「ほらほらそんな緊張しないで。そんな大した話するわけじゃないんだから。えーと、なんで彼らとマリカ友達なのかってことだよね? あ! 実はス○ブラ友達じゃないのかって? それは――」
「違います」
ボケを出しきる前にツッコんだせいか。理事長は、しゅんと効果音が聞こえてきそうなほど大袈裟に落ち込んだ。
ちなみに葵さん、スマッ○ュはめちゃ強です。
使用キャラにホームランバット持たせたら大変なことになります。ご想像はお任せ。
「(ぐすん。ま、いっか)結論から言うと、私と桜李がイトコ同士だからだ」
「え!」
あまりにも予想外の答えに思わず素が出る。
だって、そりゃそうだろう。あの、見るからに小動物っぽくて可愛い彼と理事長に、同じ血が流れているなんて。
「桜李が小さい時からよく面倒見てたんだけど、小学生に上がった時、ここにいる彼らと出会ったんだ」
昔のことを思い出してるのか、理事長は視線を外しながら話を続けた。
「桜李と友達になった彼らと、私も誘われて一緒に遊んでたりしたから。昔から仲が良かったんだよ」
そう嬉しそうに話した理事長。
しかしだ。どうやらそう思っていたのは理事長だけのようで。
「いやいや、俺ら(あたしら)が理事長と遊んでやってたんだし」
まさかの全員から総ツッコミが来るという。
そんな理事長はというと、照れながらほっぺたをポリポリ掻いていた。
……どうやら嬉しいらしい。予感はしてた。彼はドMだろうと。