すべてはあの花のために①
一章 出会い

何でも持っている完璧なお嬢様?




 ――春。それは、出逢いの季節。


「おはよ~」

「あ! おっはよー!」


 校門をくぐると、生徒たちの賑やかな声が聞こえてくる。
   

「去年の学年末試験の結果が貼りだされてるみたいよ」

「……! そうだった! それでクラス分けされるんだもんね」


 期待と不安。混じり合っている生徒たちを包むようにここ、桜ヶ丘(さくらがおか)高校のシンボルである満開の桜たちが、フワリと枝を揺らし花びらを舞い散らせていた。


「ま、それだけじゃないんだけどね」

「そっか。点数と、確か家柄も反映されるんだっけ? なかなか上のクラスには行けないか」


 ――そう、ここ桜ヶ丘は。

 企業トップクラスで、どこかの社長の、のちに跡取りになるような人だったり。医者や政治家、弁護士の子どもだったり。または、華道や茶道、柔道や剣道や空手などで名を馳せている人だったり。はたまた、芸能人、トップアイドル、トップモデルなんかもいちゃったり。少数だがごくごく一般家庭の人も、それ以外の人も、中にはいたりする。

 まあ所謂、いろんな人たちがごちゃっとしている学校なのである。


「やっぱりあんたも上のクラスいきたいんだ?」

「そりゃそうでしょ! なんたって、将来を約束されるようなもんだし、できるもんなら伸し上がってやりたい!」


 そんな中意気込んでいる人が大勢いるのは、この学校の、ちょっと変わった校風に訳があったりする。

 それはここ、桜ヶ丘高校での成績上位者。Sクラスの生徒にもたらされる、まるで夢のようなサポート。
 大手企業への内定。有名大学への進学。または、起業のための全面的フォロー。はたまた、芸能界へスカウト、全面協力などなど。


「確かにねー。将来安泰なら路頭に迷って野垂れ死ぬとこはないわね」

「だよね! それでもいいんだけど、……やっぱり夢! 見たいよね~」


 ――そして。


「あ、やっぱりあんたも?」

「うん! 乗れるなら、乗ってみせるさ!」


 Sクラスを目指す一番の理由。それは――――。



「「玉の輿!」」


 みたいな馬鹿げた話も、実は嘘や噂話ではなかったりする。
 過去に数度、どこかの財閥の婚約者に見初められた人がいるとかいないとか。しかもめでたく結ばれ、幸せになったって噂で……。

 そりゃ食いつきたくもなるよね!


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