すべてはあの花のために①

プリンが美味しそうだったから




「ちょっと! まだ朝倉先生と理事長来てないのにっ! 勝手に始めてんのー!」


 葵が隣の部屋に入った時には、中はすでに温まっていた。


「そんなのいいんだよ。いつものことだって」

「そ~だよ。アオイちゃんも早く来ないと、ご馳走なくなっちゃうよー?」

「いやでもね、せっかく準備してくれたんだからさ、お礼ぐらいは言ってから食べようよ」


 そうは言ってみるが、もうすでにバクバクみんな食べている。


 チカゼはチキンにかぶりつき、

「(おお逞しい!)」


 キサは鮭のムニエルを何故か箸で、

「(まあ! お上品ね!)」


 アカネは煮豆をつつき、

「(和食が好きなのかな?)」


 オウリは両手で枝豆を、

「(りっ、リスみたいぃいいー!)」


 カナデが飲んでるのは……ブドウジュース?

「(おい、酒じゃないか? 顔赤いぞ!?)」


 九条弟はカロリー○イト片手にスマホを触り、

「(ご、ご馳走目の前に何故??)」


 ツバサはコラーゲン鍋を、

「(お肌、大事だもんね)」


 アキラは言わずもがなデザートを、

「(糖尿病になるぞー)」


 それぞれの好物なんかはよくわかったけれども。


「(いや~、みんなマイペースだね~)」


 葵の言葉はどうやらもう、彼らの耳には届かないらしい。

 言っても聞かない彼らに、とうとう葵は………。


「ねえ、君たち……」


 と言いつつ右手でチカゼの頭を、


「いい加減に………」


 左手でカナデの頭を掴み――――



「しなさいっ!(ゴツッ)」


 二人の頭同士を、思いきりぶつけてやった。


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