すべてはあの花のために①

わたしは、みんなに……怒ってる




「……え?」


 謝られるとは思っていなかったのか。カナデの口はぽかーんと開いていて、さっきまでの感情は完全に抜け落ちていた。


「チカくんも。頭痛かったよね。ごめん」

「い、いや。それは……そう、だけど。え?」


 さっきまでの威勢はどこに行ったのか。今度はオロオロとし始めた。
 よく、わかっていないみたいだ。


「でも」


 それでも葵は続ける。


「先生と理事長を待っていようよって言ったのに、聞かなかったみんなのことは、正直怒ってるよ」

「は? いっ、一体どういう……」


 言いかけたチカゼを、すっと目で制す。


「(……あれ?)」


 その時少し周りを見渡していたら、葵にある推測が浮かんだ。


「( 理事長、もしかしてあなたは……)」


 けれどそのことに関しては、まだ確証がないため、そっと心の中に留めておいた。


「でも、怒り方を間違えた。間違えてた。間違って手を出しちゃったから。だからそれは、ごめんなさい」

「いや! だから、どうして怒ってんのかって……」


 そう言うチカゼに、葵はゆっくりと頷く。


「(いいよ。一つずつ話していこう)」


 そう。ゆっくり。花びらを一枚ずつ摘むように。



「わたしには、友達と呼べる人が一人もいないんだ」


 ――――まずは一枚。


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