すべてはあの花のために①
だってマイナスイオンだもん!
それは、みんなと帰宅中のことだった。
わいわいガヤガヤ。楽しそうに話していると、気付けば例の、葵が不良たちをボコボコにした付近――北と西の境界に差し掛かっていた。
ちなみに桜は、近隣の道路が渋滞してしまうため、よっぽどのことがない限り車等の送迎は禁止されています。進学初日に葵が送られたのは、恐らくよっぽどのことであろう諸々の理由により。
「(そういえばここ、ある意味オウリくんを助けられた特別な場所じゃない?)」
変態になったことは都合よく頭からすっぽ抜けている葵がそんなことを思っていると。
「――おい。そこのお前ら、ちょっと待て」
苛立ちを隠せない声が、葵たちを引き止めてくる。
振り向くと、そこには藤ヶ丘高校の柄の悪い生徒たちが十数人ぐらいいた。どうやら、その中の一人が声をかけてきたらしい。
……それにしても。
「(うわ~。顔中ピアスだらけなんですけど。顔洗う時どうするんだろ……てか、どっかに引っかけたら絶対痛いじゃん! しかも、どうなってるのか見えないから引っかけても誰かに助けてもらうんでしょ? ウケるー!)」
みたいに、他人を心配してるのか馬鹿にしているのかわからない葵を余所に。
「俺らの仲間がさ~? 昨日お前らんとこの変な奴にやられたって言ってたんだよな~。しかも女ー」
ん? ちょ、これはマズいのではないか?
「それでさー? 俺ら今そいつ捜してぼこってやろうと思ってんのー。んで、そいつの特徴聞いたんだけど――」
「(……え? これってまさかの復讐しにきたパターンのヤツ?)」
((何暢気なこと言ってるの。あんた今ピンチなんだよ? ちゃんとわかってる?))
「(そうなんだよねー。チカくんは恐らく大丈夫だと思うんだ。あの時は一本背負いしちゃったけど、されたのってわりとわざとっぽかったし)」
((そう。じゃあパンツ撮るためにわざと投げられたわけね))
「(ちっがーう! でもまあ、今それはさておいて。わたしらだけでみんなを庇いながら、この人数を相手にするのはちょっと厳しいかも)」
「そいつの特徴がー、黒髪だったって言っ、……?」
……? どうしたんだ?
不良が、急に喋ることを止めたのだ。
そして、奴の視線は何故か葵ではなく……。
「(? ツバサくん?)」
いや、黒髪は一緒だけども。
女子の制服を着てはいるが、これでもれっきとした男だぞ!!
不良くんは目の前まで来たあと、ツバサの両手をぎゅっと握り――――
「あんたに惚れた(ぽっ)」