すべてはあの花のために①

例えばの話だけど


「さ、桜にはそんなジンクスもあるんだね。そ、そりゃ彼らも必死になるわけだね……」

「そうなんだよ。……はあ」


 チカゼは、大きなため息をついてガクッと項垂れてしまった。説明が疲れたわけではなく、そんなジンクスに必死になっている生徒たちに、大いに呆れたからである。

 それではここで恒例の、そのジンクスについての要点をまとめてみたよ!


 新生徒会メンバーのお披露目式後
 ↓
 一限(90分)の間に、彼らのネクタイorリボンを奪取!
 ↓
 それを、自分の右手首に巻けば来年はSクラス&玉の輿確定!?
 そして、自分の左手首に巻けばその人との恋が実る!?
 ↓
 新生徒会メンバーになったオレらは奪われたくない
 ↓
 時間いっぱい必死で逃げる!


 ……と、いうことらしい。


「で、でもさ、元からネクタイ着けなかったらいいんじゃないの?」


 そういえば、昨日はネクタイをしていなかったチカゼとカナデとアカネが、今日は何故か着けてきていた。でもそれは、単にお披露目式があったからだと思っていたけれど。


「いや。それじゃダメなんだ」


 そう言ってチカゼは、続いて生徒会側の説明をする。


 新生徒会メンバーはお披露目式の日、きちんとした正装で来ること
 ↓
 もし時間いっぱい阻止できたら、卒業後の援助+α
 ↓
 阻止できなかったとしてもほぼSクラスは確定だが、卒業後恐ろしいことが起こる
 ※ちなみに、最初から着けて来ないなどのズルも同じ目に遭う


「……成る程。そのジンクス通りなら、逃げるしかないと。そういうことだね……?」


 なんなんだこの設定。うちの生徒、ジンクス信じ過ぎじゃね? 大丈夫? 新手の詐欺に遭ったりしてない??


「ち、ちなみになんだけど、その、卒業後の恐ろしいこと……って?」

「……それは、まずは足の小指をタンスの角にぶつけることから始まって……」


 なんでだろう。出だしはめちゃくちゃ面白かったのに、彼は話すことさえ嫌そうだ。


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