すべてはあの花のために②

地獄を見ることになるぞ


 体育祭前日。とうとう業者を入れて体育祭準備を行う。
 一人ずつ無線を持ったことを確認したアキラは、改めて葵、そしてヒナタの方へと向き直った。


「今日はお前たちがメインで動くことになる。俺たちも作業には加わるが、極力一人にはならないようにすること。もし怪しい奴がいたら一人で行動はしないこと。お互いがお互いを見ておくように」


 業者も一人で行動はさせないよう、三人一組になって行動してもらう。本番でも同様だ。三人で一つの無線を使うことになっているから、勝手に動く人もいないはず。


「(そうはいっても、視線が一人とは限らない。その三人がまとまってたら……厄介だ)」

「ではグラウンドへ行こう。みんな、気を抜かないように」


 アキラの指示に大きく頷き、みんな一斉に動き出す。


「ちょっと」

「どうしたの?」


 葵も行こうとしたら、ヒナタに呼び止められた。彼はいつにも増して真剣な表情だ。


「(君の性格知らない女性たちは、きっとこの顔に心を射貫かれてしまうんでしょうね……)」

「ちょっと。話聞いてる?」

「すんません。聞いてないです」


 葵がおバカなことを考えている間に何か言ってたらしい。


「あんたは絶対オレらの見えるところにいて。そしたら、その変な……嫌な視線の奴もわかるかもしれないから」

「(正直に心配だって言えないのが、トーマさんとは違うところかな)」

「わかった?」

「ハイスミマセン」


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