すべてはあの花のために②
十五章 体育祭

許しません


 今日はとうとう体育祭。昨日一件で、妙な視線はあの三人だったのだろうということで、葵は少しだけ気持ちに余裕ができていた。最終チェックでマイクの音量、道具の数、垂れ幕の下ろすタイミングなどの確認を行う。
 すると、正門の方できょろきょろとしているアカネを発見。


「(どうしたんだろう。もうすぐ始まるのに……)」


 気になったら即行動がモットーの葵は、昨日のことなんか知~らないっ。カナデの噂も聞いたもんっと、アカネの元へと駆けていった。


「アカネくん? どうかしたの? 誰か待ってるの?」

「――! あ、あおいチャン?」

「え? うん。そうだけど……」


 何故か信じられないようなものを見るような目で見つめられた。


「(珍獣扱いか? 確かに、変態で下僕のコスプレ星人が加わったし……)」


 うーんと腕を組むと、その拍子に腕に巻かれた湿布に気づいたのか、アカネはばつが悪そうな顔をする。


「あ、あおいチャンごめ」

「ごめんアカネくん!」

「っ。え? な、なんであおいチャンがおれに謝るの……?」

「え? だって、わたしがアカネくんに酷いことしたから」


 アカネは「ええ?! いつそんなことしたの!」と本気で驚いていた。


「いやいや! 完全におれの八つ当たりだから! あおいチャンが悪いことなんて一つもないんだよ!」

「え? そうなの?」

「そうだよ! だから、……八つ当たりして、ごめんなさい」


 そう言って、彼は深々と丁寧に頭を下げてくるから……。


「……――許しません」


 って言ってみた。


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