すべてはあの花のために②

だいぶ根に持ってるんだね


 テントに戻ると、心配したチカゼとキサに掴みかかられる。そうされながら、ちらりとヒナタの方を見ると、無表情で司会の仕事をしていた。オウリはにっこりと笑うだけだが、「心配掛けてごめんね」と謝ると、みんなはほっと安心した表情になる。


『プログラム16。2年生男子全員による騎馬戦です』


 抑揚のない、やる気のない声でヒナタが言うと、2年男子が全員上半身裸で入場してきて――――きやあああー! ……黄色い歓声が。鼓膜が破れそうになった葵は、来年は絶対耳栓を持参し用意と、持ち物リストに記載しておいた。


「(あれ? でも、ツバサくんは……)」


 断固拒否したのか、彼だけは体操着着用。キャラがぶれない……。

 どうやら2年生の生徒会メンバーは四人で騎馬を組むらしく、下の台の先頭にツバサ、両サイドにアキラとカナデ、その上にアカネが乗っていた。
 アカネが眼鏡を外して、前髪を掻き上げた時――――きゃあー! 二宮くんのお顔がああー! ……と、再び黄色い声援。そんな気がした葵は、今度こそ耳を塞いだ。

 その後彼らの騎馬は、どんどん他クラスの上に乗っている人たちの頭からハチマキを奪っていった。一番先頭にいるツバサが高身長ということもあり、一際大きな彼らの騎馬はよく目立つ。


「(にしても、ツバサくん……)」


 上は上で争ってる中、下でツバサは「もうっ! なんでアタシ今回こんなに出番がないのよ!」って、いじけながら相手の騎馬に蹴りを入れて台から崩しにかかっている。後ろのアキラとカナデからも「俺らの出番増やせ!」って、文句が聞こえた。
 ちなみにアカネはというと、「今回は多いから嬉しい~」と笑っていて、下の台から睨まれ危うく落とされそうに。

 そうこうしているうちに、アカネが他クラスの大将のハチマキを奪ったらしく、Sクラスが大勝。ツバサは次の綱引きにも続いて出るらしく、彼以外の三人がテントへ心配そうな顔をして戻ってくる。


「詳しくは後で話すよ。今はお仕事しないと!」


 ひとまずそうみんなを促しておくが、アカネは先程のことを気にしている様子。『さっきのとは違うよ』と意志を込めながら首を振ると、アカネは渋々司会の席に着いた。それと入れ違いで1年生組が次の棒倒しの準備に行くらしく、席を立つ。


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