すべてはあの花のために②
それだけ聞いて回し蹴りした
体育祭が終わっても生徒会は後片付けに追われ、葵たちは業者の方と無線でやりとりしながらテントや道具を片付けていた。
ようやく片付けにも目処が立ったところで、葵は業者の責任者の方に直接無線で連絡を取る。
『おう。どうした嬢ちゃん』
「すみません。まだ作業中だとは思うのですが、少しお話ししたいことがありまして」
葵がそう言うと、報告を受けていたのか向こうは用件を察してくれたよう。心配そうにしていてくれたオウリに少しだけ抜けることを告げ、事の起こった体育館裏へと急ぐ。
互いに時間が限られているため、体育館裏に来てすぐ本題に入った。
「伺いたいのは新入りの三人組のことです。彼らの情報を戴きたい」
真っ直ぐに向けられた視線に、業者の責任者――ヒエンは怪訝な表情で目を細める。
「お嬢ちゃんも察していると思うが、聞いたところでその情報は役に立つのか?」
「わたしが知りたいのはあくまでも状況証拠。彼らがいつ頃会社に入ったのか、面接時のお話が少し聞きたいだけなので」
そういうことならと、苦笑しながら話してくれた。
「履歴書とかは至って普通。面接をしたのは本当に最近だ。8月の終わりか……9月の頭。募集もかけてたし、積極的にここの体育祭の手伝いをしたいってんで、説明会にも連れてきた」
そして彼は「受け答えは至って正常。精神的な問題も、日常会話にも支障はねえ」と敢えて付け加え、「でも……そうだな」と、気になったことを最後に付け足した。
「端から見えればきちんと働いているようには見えた。だが、仕事に身が入っていない時もあった」
――まるで、違う目的のために動いているかのように。