すべてはあの花のために②

筋トレ中だから


 翌日。待ち合わせ場所に着くと、アカネがすでに待っていた。


「え? どうしてそんなに大荷物?」

「カナデくんの筋トレ中だから気にしないで?」

「どうしてアオイちゃんが勝手に答えてるの……?!」


 カナデについてはさておき、それから高台にある彼の家へと案内してもらった。


「どうぞおー」

「うん? いらっしゃい。お客さんかな?」


 アカネが引き戸を開けると、そこにはやわらかい雰囲気を持った男性。


「こんにちは! お邪魔します!」

「こんにちは。あかねのお友達かな?」


 そこまで言って、隣に立つカナデの姿を見るや、少し驚いた様子で「あれ。もしかして、かなクン?」と話しかける。カナデは少しだけ申し訳なさそうにしながら、「その節はお世話になりました」と頭を下げていた。


「君が元気そうでよかった」

「……っ、はい」


 何かを堪えるように返事をしたカナデに、アカネは小さく笑いながら、父親であろう彼の後ろのレバーを持つ。


「じゃあ案内するねえ! ついてきてえ!」


 そう言って奥へと進んでいった。彼の、車椅子を押しながら。


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