すべてはあの花のために②

お尻引っ叩いてでも連れて行く


「最後まで聞いてくれてありがとお~!」


 そう言うアカネはどこか吹っ切れたような笑顔だった。


「かなクン、あおいサン。あかねの心配をしてくれて、本当にありがとう」


 二人は笑顔でこちらに頭を下げてくる。カナデは自分も感謝しているのか、「それは俺の方です」と言って頭を下げていた。でも、葵はただ真っ直ぐに二人を見つめていた。


「じゃあおれがお昼ご飯でも作るよお! 今日は午後から稽古に行かないといけないからね~」


 そう言ってアトリエを出て行きそうになるアカネを、葵は引き止める。
 アカネは驚いたように振り返った。どうやらこれ以上、彼から話すことは何もないらしい。


「少しだけ、わたしからも話をさせてもらってもいいだろうか」

「「「え」」」


 若干怒気を含んでいる声音に、その場にいた全員が固まった。
 アカネは首を傾げながら、こちらに来て聞く体勢になる。


「ありがとう。それじゃあわたしから一つ。聞かせてもらったお礼に――」


 そう言って葵はアカネの頬に両手を持って行って……。


「……?! いひゃい! いひゃいよおーあおいひゃんっ……!」


 びろろろろ~んと、これでもかと言うほど、思い切り彼のほっぺたを伸ばした。


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